第10章 公開プロポーズ
フィニッシュゲートが見えてきた!
…と思ったら、
そのゲートのすぐ横で
“白い布”が跳び跳ねてる。
旗のようなその布には
『アキが1等賞!』の文字。
ゲートをくぐった私に向かって一直線に
その旗を持った光太郎が駆け寄ってきた。
『ヘイヘイヘ~イ!
やっぱアキすっげーじゃん、
ハーフマラソン女子の部1位だぜ!』
『…ハァ、ハァ…
あのさ、いっこづつ質問させて。
あたし、ホントに、1位なの?』
『そう、女子ハーフで1位!
さっすが、ヨントリー陸上部!』
前を抜くことに夢中だったから
自分が何位かなんて、
気にならなかった。
無欲の勝利って、こういうことなのね。
『も1つ質問。この旗、どーしたの?』
『へへん。準備してきたんだぜ。
俺の手描き。すごくね?
こういうお祭りの準備とかって、
俺、燃えちゃうタイプなんだよねーっ。』
…お祭りって(笑)
『…てか、なんでこの言葉よ?
"アキが1等賞"って。』
『え?だって他に書くことあるか?
あれ?"愛してる"とか書いてほしかった?』
『違う!たまたま1等だったけど、
違った時は恥ずかしいじゃん!
普通、ガンバレとか書くんじゃない?』
『でも、ゴール前でガンバレもねーし。
そもそも、そんなこと言わなくたって
アキ、頑張ってんだろ。
何位でもいいんだよ、
俺基準の1等賞なんだから。』
…そんなことを言い合ってると、
係員の人が遠慮がちに声をかけてくる。
『あの…お取り込み中に申し訳ないんですけど、
表彰式が始まりますので、そろそろこちらへ…』
誰も知らないところでひっそり走る…
つもりだったのに、
結局、表彰台にあがり、
しかも、
光太郎の派手な応援旗と一緒に
テレビの取材までうけてしまった…
本当に、
光太郎といると、
私まで
光太郎の木漏れ日があたって
輝けるみたい…