第10章 公開プロポーズ
『おー、俺、マラソンの会場って初めてだわ。
外なのに、体育館とおんなじ
エアーサロンパスの匂い、するんだな。
おもしろいっ。』
マラソン大会当日、
光太郎は応援に来てくれた。
『あ、屋台もいっぱい出てるじゃん。
何食おっかなぁー。
マラソンの会場って祭りみたいで楽しいなぁ。』
相変わらず、光太郎は楽しそう。
一方、私は、
小さなマラソン大会とはいえ
競技に参加するのは久々で。
ケガは完治してるけど
自分がどれくらい走れるのか
見当もつかない。
『途中棄権しちゃったらゴメンね…』
気弱なことを口にしながら
スタートゲートに向かう私の背中を
バチーンと叩いた光太郎は
『な、しんどくなったら、
走り終わってから
最初に欲しいもののこと、考えろよ。
俺だったら、大ジョッキのビールかな。』
と、ゆる~く送り出してくれた。
頑張れ、とか
きっと大丈夫、とか
言わないところが光太郎らしい。
私はしんどくなったら
何を思い出そうかな?
光太郎はビールって言ってたけど、
私は…お寿司?パンケーキもいいなぁ。
あ、でも、冷たいパフェも捨てがたい。
光太郎とビールで乾杯、もアリかな…
…そんなことを考えているうちに
スタートのピストルがなった。
緊張せずにスタートしたのは初めて。
走り始めたばかりなのに、
もうワクワクしている自分がいる。
光太郎の魔法に、かかったみたい…