第10章 公開プロポーズ
…単純すぎじゃない?と思う一方で、
そんな気持ちで走ったことは
もう、久しくないことに気付く。
『お、ちょーどいいじゃん。
こーいうの、出てみれば?』
目の前のテレビで、
隣県の小さなマラソン大会の告知をしていた。
…これなら、知ってる人もいないかな。
人目を気にせず走ってみたい。
私はまだ、走ることを
楽しいと思えるのだろうか…
『ハーフマラソン、出てみようかなぁ。
ね、光太郎も一緒に出ようよ。』
イベント好きな彼のこと。
きっとノッてくれると思って誘ってみたら、
意外な答えがかえってきた。
『これはアキが一人で走んなきゃダメだろ。』
『なんで?』
『俺が走ったら、俺とアキの競争になるじゃん。
自分の気持ちを確認したいんだったら
アキ一人で出ないと。』
…そんなこと、考えるんだね。
私の知らない光太郎の一面だった。
でも、確かに光太郎のいう通りで。
だから私は、
一人でその大会にエントリーした。