第10章 公開プロポーズ
付き合い始めてまもなく、
私がスランプだと打ち明けた時、
光太郎はケロリとした顔で言った。
『知ってる。
いつも、グラウンドで一人だったじゃん。
時々、その姿見ててさ、
だからあの日、声かけたんだもん。』
『そうなの?』
『俺、気になるんだよねー、
ああいう、
悔しそうなのに
前に行けない感じの人。
後ろからどついてやりたくなる、
っつーかさ。
ま、アキ、かわいいし、
声かけるきっかけあってラッキー、
ってのもあったけど~。』
…光太郎独特の言い回し。
軽そうな言葉の中に、
いろんなニュアンスが含まれてる。
ところが、
それについて考える暇もなく
光太郎はこんなことを言った。
『でもさ、
ケガ治ってるのにまだスランプって
どーいうこと?
お前、誰のために走ってんのよ。
他人の目、気にしすぎだろ。
1回、順位とか忘れてみれば?
ゴールした後の、
ビールのうまさだけ追っかけてさ。』