第10章 公開プロポーズ
正直に言う。
光太郎に最初に声をかけられた時、
私はケガをきっかけにスランプに陥り、
一人で調整することを
余儀なくされていた。
人と競いあって負けたら。
唯一の取り柄を失ったら
私の存在意義はどうなる?
走るしかないのに、
走るのが怖い。
そんな
負のスパイラルの真っ只中にいた。
だから、
光太郎に勝負を挑まれて
夢中で走ったことが
自分でも驚きだった。
あの時は、
光太郎だけが私を見てたし、
私も
光太郎しか見てなかった。
勝負に勝ちたい、というより、
光太郎の眩しさを追いかけて走った。
それ以外のことは、何も考えず。
ただ、夢中で。