第8章 小さな小さな披露宴
アイツらが帰って、
急に静かになった店を二人で片付ける。
アキさんが、
皿を洗う手を止めて言った。
『一静さん、』
『ん?』
『私、故郷を捨ててこの町に来たから
幼馴染みとか友達とか、いないでしょ。
だから、
一静さんのお友達の心遣い、
すごく、嬉しかった。』
『うん。』
『ここで生きていっていいんだ、って
やっと実感出来た気がするの。
この町のことも、
一静さんのことも、
もっと知りたい。
一静さんを取り囲む世界を、
これから私にも
少しずつおしえてくれる?』
…アキさんの心が、
前を向いた瞬間だった。
花巻、岩泉、そして及川。
お前らのおかげだよ。
何度言っても言いたりないな。
本当に、ありがとう。