第8章 小さな小さな披露宴
『まっつん、アキさん、オメデト。
そんじゃ、カンパ~イ!』
普段着に着替えて、店で乾杯。
突然のことだったから
大した料理は出せないけど、
俺とアキさんからのお礼の気持ちだ。
途中でふと席をはずした及川が
コンビニでケーキを買ってきた。
『ね、ちっちゃいけどさ、
これに二人でナイフ入れてよ。
はい、カメラマンさんいいですか?
新郎新婦、ケーキご入刀です!』
…及川らしくない優しさだな(笑)
でも、及川自身が、今、
幸せだから出来る心遣いだとわかる。
花巻の奥さんは、
飲みながらもスナップ写真を
たくさん撮ってくれていて、
アキさんは、
及川と岩泉のいつもの激しいやりとりを
初めて目にして笑い転げてる。
『みんな、目、あいてる?さ、くるよ~』
3・2・1・パシャッ。
最後はセルフタイマーを使って、
みんなで集合写真を撮った。
及川。
岩泉。
花巻夫婦。
そして、アキさんと、
写真の一成さんと、
俺。
…今、俺が心を許せる人が
みんな集まった集合写真だ。
『松、おめでとう。』
『写真、楽しみにしてろよ。』
『出来るだけ早く届けるからね!』
『まっつん、奥さん泣かせたら、
及川さんがもらっちゃうよ~ん。』
…俺、誰にも言わずに結婚したのは
なぜだったんだろう。
事情なんか気にせず、
こんなに心から祝福してくれる
仲間がいるのにな。
小さいけど、
これが、
俺とアキさんの結婚披露宴だ。
この場を設けてくれたアイツらに
感謝の言葉しか思い浮かばない。
『お前ら、俺の誇りだ。ありがとう。』
…なんて、素直に言えねーけどな(笑)