第8章 小さな小さな披露宴
『そっちの準備は出来た?
こっちはいつでもOKよ!』
花巻の嫁さんは、
俺も高校時代からよく知っている仲間の一人。
カメラマンでもある彼女は、こう言った。
『うちのスタジオに来てもらっても
よかったんだけどね、
せっかくの記念写真だから、
一番大切な場所で撮影してあげたい、って
貴大たちが言うから。
二人にとって一番大切なのは、
やっぱり、このお店でしょ?』
もう一度、暖簾をだして
店の看板にあかりを灯す。
すっかり夜も更けた町を背景に
店の前に並んだ時、花巻が言った。
『あのさ…前のご主人の写真、持ってみないか?』
そうだな。
本当は、一番最初に
アキさんの花嫁姿を見るはずだった、
一成さん。
一成さんがいたからこその出会い。
だったら、
一緒に写ってもらいたい。
…俺とアキさんと一成さん、
三人一緒の記念写真だ。
夜の町に、フラッシュが光る。
馴れないことで緊張するかと思ったけど、
カメラの向こう側で
アイツらがバカなことを言って笑わせるから、
緊張するヒマがなかった。