第8章 小さな小さな披露宴
彼女の目隠しをはずす。
『いっせいさん…ありがとうございました。』
『いや、あの、その…
お礼を言われるようなことだったかどうか…』
『いいえ。おかげで私、
ちゃんと自分の気持ちを
伝えられたような気がしてますもの。』
『お役に立てたのなら幸いですけど…』
俺としては、それしか言いようがなくて。
『あの、俺、帰りますね。』
『…朝まで、一緒にいて下さい…』
『でも…』
『むしろ、私からのお願いです。
今夜は一人にしないでほしい…
ご迷惑じゃなければ、そばにいて下さい。
もうバスもありませんし。』
…そんな成り行きで、
結局朝まで彼女と過ごし、
そのまま店から仕事に行った。
俺が仕事に行ってる間に
彼女が洗濯をしておいてくれたので
そのまま仕事帰りに取りに行き、
そのまま飲みながら飯を食って、
またバスに乗り遅れてしまい…
それを何度か繰り返すうち、
俺は自分のアパートには
ほとんど帰らなくなってしまった。