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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第8章 小さな小さな披露宴




ある日の閉店後。
お客がいなくなったカウンターで
ゆっくり飲んでいる俺に、
アキさんが一冊のノートを持ってきた。

『あのね、これ、
主人が入院中に書いてた日記なの。
中を見たこと、なかったんだけど…』

掃除中にそのノートがバサリと床に落ち、
偶然開いた、というページには、
こんなことが書いてあった。



"リハビリの松川先生は、
俺と同じ「いっせい」という名前らしい。

アキが俺を呼ぶ声。
あの声をいつまでも聞いていたい。

もし俺がこの世からいなくなっても、
松川先生とアキが一緒になってくれたら
アキはずっと、
俺の名前を呼んでくれることになるのだろうか。

それならば。
松川先生にだけは、
俺のアキを託してもいいと思える。"


これって…

あの日、病院の廊下で出会ったのも、
バスから降りた日、店の前で会ったのも、
そして一周忌の日に、彼女を抱いたのも、

もしかしたら全て、
愛するアキさんを
一人ぼっちにしないように、
という一成さんの優しさからの計らいで。

そして、
はからずも
担当していた患者さんの奥さんと
必要以上に親しくなってしまった…という
俺の後ろめたさを許してくれる、という
言葉にも思えてくる。

『あの…
彼のこんな気持ちを知った上で
私に名前を呼ばれるのは、イヤ?』

『そんなことないよ。
むしろ、一成さんが許してくれるなら、
俺はずーっと、名前を呼んでほしい。』

…そんなわけで俺たちは、
彼の2回目の命日に、入籍した。

二人一緒に、
一成さんのことを偲ぶ日にしたいから。


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