第2章 スペシャルウェディング
『たんぽぽコーヒーには、
カフェインが入ってないんです。
だから、寝る前とか妊婦さんでも
安心して飲めるんですよ。』
初めて飲むたんぽぽコーヒーが
おいしいかどうか、
正直、俺にはよくわからなかった。
でもその日以来、
夜勤あけの日はこの喫茶店に寄って、
たんぽぽコーヒーを飲んでから帰るようになった。
来るたび、
カウンターごしに、
彼女のことを少しずつ知る。
アキという名前。
年下かと思っていたけど
同じ年だということ。
コーヒーが好きで、
この店で週に6日、バイトしてること。
近い将来、
自分でカフェをやりたいこと。
出会った時、
大事そうに抱えていた段ボールは、
奮発して買ったコーヒーメーカーだったこと。
そのコーヒーメーカーを使って、
毎朝飲むコーヒーがおいしいこと。
『朝のコーヒーがおいしいって、いいなぁ。』
何気なく言った俺のひとことに、
アキがうつむき加減で答えた。
『あたし…旭さんに
モーニングコーヒー淹れてあげたいな。』
…それは、彼女からの告白だった。