第2章 スペシャルウェディング
『あれ、アキちゃん、
さっき帰ったとばっかり思ってたけど?』
『マスター、お願い!
この人にコーヒー、ご馳走させて下さい!
もちろん、勤務時間外扱いでいいんです。』
『何だかよくわかんないけど、
暇な時間だし、ゆっくりどうぞ。』
俺の意見など全く関係ないペースで
話がどんどんすすんでる。
『ええと、…あ、コーヒーより先にシャツ!
洗ってお返ししなくちゃ!』
…この場で脱がされそうだ…
『あ、いいです。
どうせ 帰ったらすぐ、洗濯するんで。』
『でも…』
『ホントに。ホントに大丈夫だから。』
『じゃ、せめて
淹れたてのコーヒー、 ご馳走させて下さい。』
『それは嬉しいな。』
ここで、不思議な質問をされる。
『どんなコーヒーがお好みですか?』
どんなコーヒー?
どんな、って?
ホットかアイスか?
ブラックか、砂糖とミルクを入れるか?
まさか喫茶店で
ジョージアかボスかワンダかは選ばないよな?
『…ホットのブラック…』
『あ、もしかして缶コーヒー専門?
じゃあ今日があなたの
コーヒー記念日になるといいな。』
夜勤あけで、
これから帰って眠るつもりだということ。
あまり苦くない方が好みだということ。
砂糖やミルクは使わないことが多いこと。
そんな俺のために
彼女が淹れてくれたのは、
『はい、たんぽぽコーヒー。』
…たんぽぽ、コーヒー?…