第27章 ウェディングプランナー
赤いリボンと子供達の手を通って
私たちの手元に届いた結婚指輪を、
夜久君がリングピローにのせて
持ってきてくれた。
…初めて見る、私のための結婚指輪。
ゆるやかなカーブで、
真ん中に結び目のような捻り。
シンプルすぎず、
だけど上品なデザイン。
私のは、ピンクゴールド。
黒尾さんのは、
少しゴツ目だけど同じデザインで
銀色に輝くハードプラチナ。
『ステキ…』
『だろ?よかったよ。』
武田様が、
私たちの左手を重ねて下さって。
…結婚指輪の交換のシーン。
今まで何度も見てきたのに、
いざ、自分がするとなると、
緊張で手が震える。
その震えを押さえるように
そっと私たちの手の上に
武田様が手を重ねながら言った。
『僕の左手の薬指にも結婚指輪があります。
結婚した日から、ずっと。』
みんな、一斉に
自分の左手の薬指を見る。
『皆さんも、
ご自身がその指輪を交換したときの
新鮮な気持ちを思い出して下さい。
結婚生活が長くなるほど
忘れてしまいがちですけど…
結婚指輪のまるい形は、
終わりがない、つまり永遠の象徴ですよ。』
指輪を見るたびに、
今日の気持ちを思い出せるように。
『それでは、最初の指輪は
黒尾さんから早瀬さんへ、
永遠の愛と、誠実の証です。』
…小さな丸が、私の左手に。
ネイルチップの花のデザインが、
リングにますます映えて。
『早瀬ちゃん、サイズ、どう?』
夏希ちゃんの心配そうな声。
『ぴったり、ほら!』
本当に、ぴったり…
私のことをわかってくれる人がいる。
そう思うだけで、また、幸せ。
『では今度は、
早瀬さんから黒尾さんへ、
永遠の愛と誠実の証です。』
私から、黒尾さんへ。
何度も私を抱き締め、繋いでくれた手に、
いずれ私たちの子供を
抱き締め、受け止めてくれるその手に、
お揃いの指輪を。
…なんともいえない、一体感。
指輪の交換って、こんな気持ちなんだね…
黒尾さんの言葉が添えられる。
『これで、一緒にいられない時も、
手を繋いでるのと同じだからな。』
手を繋ぐのがイヤだった私の
心の傷を癒してくれた黒尾さん。
『俺は、自分の都合で手を離したりしない』
…と言ってくれた黒尾さん。
その黒尾さんからの、究極の"約束"が
この結婚指輪、なんだね。