第27章 ウェディングプランナー
差し出されるブーケを受けとる。
『早瀬さん、お返事を。』
ブーケから1輪、花を抜き取り、
黒尾さんの胸へ。
『私、黒尾さんに出逢えなかったら、
一生、一人でいるつもりでした。
私と出逢って、愛してくれて
ありがとうございます。
ずっと…そばにいさせてください。』
男性ゲストからは
"ヒューヒュー" "よっ!"と掛け声が。
そして、女性ゲストの中には
私と一緒に涙ぐんでくれてる方も。
…わかる。
みんな、自分の結婚式の日のこと、
思い出してくれてる。
"世界一、幸せ!"と思った、この瞬間のことを。
『それでは続いて、誓いの言葉です。
誓いの言葉は…』
ん。
誓いの言葉、といえば…
『はいはいはい、俺の出番ね!』
…やっぱり(笑)
『え~、木兎?なんで?』
笑いながら文句を言う黒尾さん。
『ここは俺だよね、早瀬ちゃん?』
『はい、他に考えられません!』
『だろ?黒尾、任せろ!』
『木兎~、しっかりやれよ!』
『木兎さん、真面目にお願いします。』
木葉様と赤葦様の声援の言葉が
的確すぎて笑えます。
涙もひっこむ展開、間違いなし(笑)
木兎さんの"誓いの言葉の実力"?!を
知らない人の方が多いんだけど、
なんとなくみんな、
何か普通ではなさそうな予感は
薄々、しているようで、
静かなのに、ワクワクした空気感。
さすが、スター。
会場を惹き付ける何かがある人。
場の空気を作るとこから天才的…。
私たちを向かい合わせて立たせ、
その向こう側の真ん中から
お客様に向かって立つ木兎さん。
思い出す。
赤葦様の結婚式の、
涙と笑いの誓いの言葉。
木葉様の結婚式の、
感動的な誓いの言葉。
…でも。
木兎さんにとって、
家族みたいな二組だからこその
あの、心のこもった"誓いの言葉"だったはず。
私達のここまでの成り行きを知らない木兎さん。
今、黒尾さんと私に、
いったい、どんな言葉をかけてくれるんだろ?
…そんな私の心配など吹き飛ばすように
ニカッと笑った木兎さんの口から
言葉が、こぼれはじめた。