第27章 ウェディングプランナー
『だから今日は、あの時のお礼に
俺たちからブーケをプレゼントさせて。』
及川様と奥様が、ブーケを持って
ヴァージンロードの向こうに
並んで立っていらっしゃいます。
丸い形のラウンドブーケ。
使われているのは
白いダリアと青いブルースター。
あ…
ちらりと月島様を見ると、
照れ隠しのように目をそらす月島様。
間違いない。
このブーケ、準備してくれたのは月島様だ。
なぜならあの時、
月島様と花言葉の話をしたから。
及川様に渡したブーケは、チューリップ。
花言葉が"理想の恋人・名声"で、
あまりに及川様にピッタリだ、って。
ダリアの花言葉は『感謝』
ブルースターは『幸せな愛、信じあう心』
こんなひそやかな気遣いをして下さるのは、
間違いなく、月島様。
『それでは黒尾さん、ブーケを取ってきて下さい。』
…武田様がそう言うと、
『やぁだ!俺、男には渡したくない!
早瀬ちゃんに直接渡すもんね!』
と、及川様がダダをこねて
『じゃ、私が渡す。
徹と違って落ち着いた男性、いいわぁ。』
…と、及川あしらいのプロ(笑)の奥様が
ブーケを及川様から取り上げ、
『うるせー、及川!』
『チャラいぞ、及川!』
…青城の皆さんのヤジの中、
奥さまから黒尾さんにブーケが手渡されます。
『お幸せに、ね。』
『おい、早瀬ちゃん泣かすなよ!』
『徹とは違うから心配ないでしょ。』
『何いってんのさ、俺のこと大好きなくせに。』
騒がしいなかでも
お二人の漫才みたいな声が
私まで聞こえて。
やっぱりお似合いの二人です。
…そして、
ブーケを持って、私の前に戻ってきた黒尾さん。
『では黒尾さん、プロポーズをお願いします。』
…シン…と静まり返るチャペル。
『おい、急に静かになんなよ、緊張するだろ。』
ゲスト席に向かって
照れたように文句を言う黒尾さん。
『黒尾さん、決めろ~!』
『クロ、ビシッとな。』
『黒尾さ~ん、笑いはいらないっすよ~!』
音駒チームの皆さんのヤジに笑った後、
黒尾さんは、私に向かって優しい声で。
『アキ、
アキは自分で人生を決めていける女だから…
"俺が幸せにする"とは言わない。
俺の隣で、幸せになれ。
お前がやりたいこと、俺が一番近くで、応援する。
だから…結婚、しよう。』