第27章 ウェディングプランナー

何がなんだかわからず
私もびっくりしているうちに

武田様が出て来られて、
人前式をすることになった。

武者小路実篤の言葉は初めて聞いたけど、
私と黒尾さんにぴったりで

さすが武田様だな、と思う。

そして、いよいよ、人前式の始まり。

『それではまず、ブーケセレモニーです。
早瀬さんはもちろんご存知でしょうが、
皆さんは花嫁のブーケの意味を知っていますか？』


その昔、ヨーロッパでは
男性がプロポーズをするとき、
行く道に咲く花を集めて花束を作り、
それを女性に渡してプロポーズをしていました。

それが、花嫁の持つブーケの由来。

花束を受け取った女性は
花束から１輪、花を抜き取り、
それを男性に渡すことで
"プロポーズを受けます"という
サインになったそうです。

それが、新郎の胸に飾るブートニア。


『お二人の場合、
早瀬さんからプロポーズしたとお聞きしてますので、』

会場内がドッと湧く。

『マジかー？』
『黒尾ー、しっかりしろー！』
『早瀬ちゃん、やるじゃーん！』
『よっ、男前！』
『いいなぁ、黒尾さん、プロポーズで
悩まずに済んだのかぁ…』

『はいはい、皆さん、お静かに(笑)』

武田様が先生の顔で皆を静める。

私は、小さい声で黒尾さんに言った。

『…ごめんなさい。なんか、オオゴトに…』

『いいじゃん、何でもする、って言っただろ？
俺も楽しんでるから、心配すんな。』

パチン、とウィンクをしてくれる。

『そこで、今度は
黒尾さんから早瀬さんにブーケを渡して、
みんなの前でプロポーズしていただきます。』

そんな、大袈裟な…
というか、その前に、

『あの、でも、武田様、
私、ブーケは頼んでなくて…』

その時、ゲスト席から大きな声がかかる。

『早瀬ちゃーん！』

…及川様？！

『俺がこのチャペルでプロポーズした時に
使ったブーケを準備してくれたの、
早瀬ちゃんなんでしょ？』

…そうだった。

取材終わり、急に
『今からプロポーズする』と言い出した及川様と
あわててその場所をセッティングしていた月島様。

そのお手伝いをさせていただいたとき。

たまたま私がその日の新婦からもらった
ブーケをお渡しして、使ってもらった。
映画みたいなワンシーン、忘れられない。