第27章 ウェディングプランナー
Aラインのウェディングドレスは
レースのロングスリーブ。
私が気にしていた胸元や貧相な体も
薄いレースがほどよく覆い、
上品なシルエットにしてくれている。
短い髪はゆるくまとめられ
人生初のおでこオープンスタイル。
そこに、存在感のある、大きくて
クラシカルなビジューのカチューシャ。
長いつけまつげと整えられた眉、
やわらかな印象のアイライン。
光を集めたようなチーク。
ふっくらした唇は、
トキメキを色にしたような、
バラみたいなピンク色。
『早瀬ちゃんは日頃が薄化粧だから、
こういう時、一番、変身するタイプじゃない?』
花巻さんの奥さんが
ファインダー越しに声をかけてくれたけど、
私も夏希ちゃんも、返事が出来なかった。
…魔法が、かかった。
私でも、
私みたいなのでも、
ちゃんと。
やっぱり、
特別だ。
花嫁の輝きは、
特別だ。
『彼もそろそろ、準備出来てるはずだよ。』
『そうだよね、早く、クロに見てもらお!
もりすけ、もりすけっ!!』
夏希ちゃんの声で
夜久君がやってくる。
『お支度、あがった?…え?これ、早瀬?』
あまりの変身ぶりに
文句を言われるんじゃないかと(←なんで?)
恐れて返事が出来ない私の代わりに、
花巻さんが答える。
『夜久さん、どうかな?』
『…花巻君、すごい魔法、かけたね!』
『だろ?…なーんてね。
違う違う、早瀬ちゃんに魔法をかけたのは
俺じゃなくて、彼氏だよ、彼氏。
女の子を輝かせるのは、恋、だから。』
『…夜久君、笑わない?』
『なぁに言ってんだ。笑うわけねぇじゃん!』
『ね、早く、クロに会いに行こうよ!』
『…そ、そうだよね。
魔法が解ける前に、早く、黒尾さんに会わないと。』
『早瀬ちゃん、』
夏希ちゃんが、
慌てる私の手を握って、言う。
『大丈夫。
これは解けない魔法だから。
クロがそばにいる限り、
早瀬ちゃんは一生、幸せ。
…何もかも、今から始まるんだよ。
会いに行こう、クロに。
誰よりも楽しみにしててくれてる、
早瀬ちゃんの"旦那様"に。』
夜久君、夏希ちゃん、まぁちゃん。
そして、
花巻さんと、奥さん。
みんなに連れられて、
私は、チャペルへ向かった。