第27章 ウェディングプランナー
『いいなぁ、クロ、優しいもんね。
もりすけと違ってさ、
いっぱい"好きだ"とか"愛してる"とか
恥ずかしがらずに言ってくれるでしょ?』
夏希ちゃんは、
まぁちゃんをあやしながら
羨ましそうに言った。
『…それがね、案外言われたこと、ないんだよ。』
『え?そうなの?!』
『うん。』
『…平気?』
『黒尾さんも私も、
その言葉をあんまり使いたくない、
っていう、変わった共通点があってね。
むしろ、その言葉を使わなくても
ちゃんと気持ちを伝えてくれるから
信じられる、っていうか。』
『…早瀬ちゃん、』
夏希ちゃんが
ホロリと涙をこぼすから、
私の方がびっくりする。
『なんで夏希ちゃんが泣くの?』
『早瀬ちゃん、
クロのこと、愛してくれてありがとう。
私達の主将はさ、
みんなの前だとどうしても
頼られる存在でいたいんだよ。
クロの弱いとこ、見たことないもん。
いっつも、
みんなのこと受け止めるばっかりで、
クロの気持ちをちゃんと誰かが
受け止めてくれてるのかなって
時々心配してたけど…
クロのこと
わかって受け止めてくれる人がいて
安心した。』
『あんまり、そんなつもりはないけど…』
『その自覚のなさが
クロには居心地がいいんだろうね。
早瀬ちゃんが、
いいとこ見せようとせずに
自然でいてくれるから、
クロも素の自分でいられるんだよ。』
自然…いつも肝心なときにお腹がなる、とか
そういうとこ、かな?(笑)
『プロポーズだって
早瀬ちゃんからしたんでしょ?』
『え?マジ?やるなぁ!』
『花巻さんまで、茶化さないで~!
…いや、それは、ほら、私がたまたま、
そのタイミングでいろいろと(汗)…』
『そんな男前な早瀬ちゃんも、
俺たちの手にかかれば、ほら、お姫様だ!』
花巻さんが、ケープをはずして
姿見の前に連れていってくれる。
…
…
…鏡の中に、知らない女の人。
花嫁の魔法がかかった、
特別にキラキラした、
香りたつような、幸せそうな。
『これは…誰ですか?』
『早瀬ちゃん…キレイ…女優さんみたい…』
『新郎様からのオーダーだよ。
"世界一、キレイにしてやってくれ"って。』
…これ、
もしかして、
わたし?