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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第27章 ウェディングプランナー



景色が後ろに流れていくのを
ぼんやり、見ていた。


新幹線で、九州へ。


広島を通過するとき、
窓から野球のスタジアムが一瞬、見えた。
フッと思い出す。
黒尾さんが、転勤した日。

家に帰って泣いていた私に
送ってきてくれたLINEに
"広島通過。野球のスタジアムが一瞬、見えた"
と書いてあったっけ。

…あの日、黒尾さんはどんな気分で
この景色を見ていたのだろう。

あれからちょうど一年。
今、私が、同じ景色を見ながら
九州に向かってる。

今日は、三連休をとった初日、
月曜日の夕方。

とりあえず電話で…と思ったんだけど、
でも、こんな大事な話、
やっぱり、顔を見て直接、話さないと。
その瞬間の表情に
きっと一番、
本当の気持ちが表れるだろうから。

だから、思いきって新幹線に乗った。
…完全に、勢い。
まだ黒尾さんにも連絡してない。

今夜、飲み会とかじゃありませんように…
家にいてくれますように…

電話して確認すればいいことなんだけど、
やっぱり、その瞬間の表情を見たくて。

私から、プロポーズするんだもん。
『私と結婚してもらえませんか?』って。

…お守り代わりに
鞄に忍ばせてきたアレを取り出す。

エリさんからもらった、香水。
LANV☆Nの"Marry me!!"

『これ、恋のおまじない!』

…そう言ったあの日のエリさん。
本当に、キラキラしてたな…

エリさん、力、貸して下さい。

そんな思いで、今日はこっちをつけてきた。

窓から見える景色に
だんだん菜の花の黄色が増えてきて、
"あぁ、南に向かってるんだな…"と
改めて、思う。

私のふるさとがある、
そして黒尾さんのいる、九州へ。

新幹線が海底のトンネルを抜け、
工場の煙突がたくさん見える街から
大きくて明るい駅に着いた時には
すっかり陽が暮れていた。

小樽の帰り、
黒尾さんの家に寄っておいてよかった。
一人で訪ねる日が、やっぱり来たもんね。

酔ったサラリーマンとすれ違う。
あ、そういえば、私もお腹、すいた。
今の気分だと…

屋台でラーメンとおでんに焼酎…
いや、ネギたっぷりの炙り豚足に
ポン酢かけて焼酎…
一瞬、そう思ってしまった気持ちを
グッと封印する。

当分、飲まない。
そんなことより、
黒尾さんが、家にいますように…


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