第27章 ウェディングプランナー
景色にポツポツと
春の彩りが加わってきた頃、
夜久君と夏希ちゃんのところに
無事、女の子が産まれた。
二人とも東京が実家だから
一ヶ月ほど
実家で子育ての練習をしている
夏希ちゃんのところに
夜久君は毎日、仕事の後に立ち寄ってて
最近は職場を出るのが早い。
もちろん、私も
仕事のサポートという形で
夜久君が早く帰れるように協力してる。
そのせいもあってか…それとも
父親になって少し意識が変わったのか…
最近は夜久君も、私に優しい。
そして今、私は、そんな夜久君に
これまでになく優しい言葉をかけられている。
『…早瀬のキャリアアップの
セカンドステージだと思うよ。
…そりゃ、俺は、
早瀬がプランナーでいてくれるのが
一番嬉しいけどさぁ。
自分で生きてくなら、
会社員のサダメだと思って受け入れろ。
血迷っても、
プランナーじゃなくなるなら辞めよう、
とかって思うなよ?』
…そう、私に異動の辞令が出たのだ。
バンケット部。
簡単に言えば、
パーティー会場を仕切ったり
厨房とのつなぎ役をする部署だ。
これはこれで、大事な仕事。
キャリアアップのためには
いろんな部署の仕事を知ることは
確かに絶対不可欠な経験で。
…でも、今、
私がやるべきことの優先順位のなかで言えば、
それは、第一位ではない。
『夜久君、ありがとう。
…あのさ、
ワガママいって申し訳ないけど、
来週、少しだけ休み、とりたい。
…私、振休、たまってるし。
今を逃すと引き継ぎとかで休めないから。』
『うん、わかった。
今まで相当、サポートしてもらったから、
今回は俺が代わる。
落ち着いて考えて、気持ち、整理しろよ。』
まだ、夜久君は
私と黒尾さんのことを知らない。
隠してるわけじゃなくて、
なんか、言うタイミングがないまま
今日まできてしまった、というか…
夜久君、ごめん。
多分、私、辞める。
今は本当のこと、言えなくてごめんね。
気持ちの整理じゃなくて、
状況を整理するために、
少し、時間がほしい。
…黒尾さんに、どうやって話そう?
ちゃんと、
私の気持ちや状況を整理したうえでの
結果として報告したい。
それに…気になってることもある。
結局、私はその翌週、
会社の定休日の火曜を挟んだ3日間、
休みをとった。