第27章 ウェディングプランナー

アキは、言った。

『今日から…ヒニンしないで欲しいんです。』

え？

ヒニン、って？

『…ヒニン、って？』

『ゴム、つけずに、ってことです。』

…予想していなかった言葉に、
すぐには返事ができず…

『…ちょっと待て、
夜っ久んはそんなつもりで
言ったんじゃないと思うぞ？』

『わかってます。
そんなこと、夜久君に言われたから、
はいそうします、ってことじゃないし。』

『…じゃ、なんで？』

さっきまでとは違う、
キリッとした力のある言葉。
まるで
仕事のプレゼンでもしてるみたいに。

『どれも、
自分で決められない不確定要素なら、
どれも同時進行でやってみよう、って。
それで最初に決まったことから
受け入れてみよう、って。』

『それは、つまり…』

『もし、異動で
プランナーでいられなくなるのが
一番早く現実になったら、
私、仕事を辞めて、九州に行きます。
私と結婚、してください。
九州で、黒尾さんと暮らしたいです。

もし黒尾さんが東京に戻るのが
一番早く現実になったら、
東京で、私と結婚して下さい。
子供が出来るまで、仕事します。

で、もし妊娠するのが
一番早く現実になったら、
私、子ども、産みたいです。
その時、例えプランナーでいたとしても
一旦、仕事、辞めます。
だから、私と結婚して下さい。』

…『結婚は、諦めた。』
かつてそう言っていたアキの口から
真っ直ぐに俺に届いたプロポーズ。

驚きと同時に、
その強い信頼に胸が熱くなった。

『男は信じられない。
だから裏切らない仕事に生きる。』と
決めていた彼女が、

俺を信じて、
一緒に生きていく道を探してくれてる。

俺はNOとは言わない、と
信じてくれてるから
はっきりと…三回も…
"結婚して下さい"と
言ってくれたに違いない。

いっぱい傷付いて、
一人で生きていく覚悟もして、
それでもまた恋をして、
信じる気持ちを思い出して、

一緒に、生きていきたい、って。
家族を作りたい、って。

『アキ…それでいいのか？』

『はい。
自分で決められないことなら
その流れに逆らわないように
生きてみたいと思います。

それが私の
"人生のタイミング"なんだって。

だから、
自然に優先順位が決まるまで
どれも、後悔しないように
チャレンジしたいんです。』