第27章 ウェディングプランナー
5連休のうち、
北海道で過ごすのは二泊三日。
あとはアキの希望で、
今、俺が住む部屋に1泊し
そこから彼女は東京に戻る予定だ。
広い広い北海道、あちこちするには
移動だけで時間が過ぎてしまう。
知り合いに"彼女と初旅行"と相談したら
"それなら断然、小樽"と勧めてくれたので
今回は、小樽に二泊することにした。
女性と初めて旅行する時、
結構、あれこれ気を遣ってしまうのは
俺だけだろうか?
交通手段とかお土産を買う場所とか
食事、カフェ、ホテル…
その段取り次第で、男としての
リーダーシップを試されるような
気がしてしまう。
ましてやアキとは今まで
ほとんど家メシしかしてない(笑)から
彼女の好みや行動パターンがわからない。
『小樽行って、何したい?』
と、
電話で話しているとき、何気なく聞いてみた。
すると彼女は
『ブラブラして、食べて飲む。
行き先は、行ってから、決めたい。』
…と言った。
『何も決めていかなくて平気か?』
『平気でしょ。だって小樽ですよ?
有名な観光地だから、困ることは絶対ない!
ガイドブックじゃなくて街を見て歩く!
…でも、ホテルの手配だけは、
黒尾さんにお任せしていいですか?』
…と、程よく頼ってくれて
ほぼノープランの小樽旅が始まった。
ブラブラ。
まさにその言葉がピッタリの散歩旅。
『黒尾さん、女性のブラブラって
男の人には苦痛かもしれないですね。
退屈したら遠慮なく言ってください。』
彼女はそうやって心配してくれたけど、
街並みや店も個性的だし、
俺一人だったら絶対に立ち寄らないような店に
次々入るのがむしろ新鮮で、
俺も、退屈どころか、充分、楽しい。
歩き疲れたら、カフェ。
運河を船で遊覧したり。
初日は到着したのが昼過ぎだったから
あっという間に時間が過ぎ、
特に買い物をすることもなく、
一旦、ホテルに向かうことにした。
『え、ここ?!』
アキが目を丸くした。
運河の町並みに馴染む、
ヨーロッパのような石造り。
ロビーにはステンドグラスやパティオ。
『…びっくり…チャペルみたい!
このままロビーで結婚式、できる!』
アキは
ウェディングプランナーらしい感想を口にした。
…きっとそうやって
喜んでくれると思ったんだ。
俺は、それが嬉しくて。