第27章 ウェディングプランナー
『黒尾さんも、今、独りなんだろ?
いいじゃねぇか、つきあっちまえよ。』
『…俺も彼女も、もう30だから。
俺はともかく、彼女は遊びで
つきあったりしねーだろ。』
『遊びじゃなくて真剣に、だよ。』
『真剣?』
『結婚も考える気でさ。』
『…マジで言ってる?』
『あぁ、おおマジだ。』
『…なぁ大将、
そんな簡単に結婚とか考えるから、
三回も離婚するハメになったんじゃねーの?』
『バカ言え。三回とも大恋愛だったぞ。』
『(笑)信じらんねーけど。』
『もう、コイツこそ運命の相手だって。』
『三回とも?』
『そう、三回とも(笑)』
大将の顔から"運命"という言葉が
聞こえると、なぜか笑ってしまう。
『でも大将、そんならなおさら、
俺と彼女はあり得ねーな。』
『そうか?』
まだ数少ない彼女との思い出を振り返る。
…最初にカフェバーで誘ったとき。
結局、俺が口説ききれなくて。
…次は銀座からラブホ行ったとき。
足並みも全然、揃わねぇし
抱いたときも、ほぼケンカ越し。
…おでん屋の帰り道も
転べば助けようと思ったのに転ばず。
終電逃せばラブホでも行くのに
結局、ギリギリ間に合って。
部屋まで行ったのに、話、聞いただけ。
…今日だって。
俺はぶっちゃけ焼酎の配達人だ。
『俺と彼女、一緒にいても、全然、
ドラマチックにもロマンチックにもなんねーんだよ。
女と二人でいて、こんなに何にもねぇこと
俺、今までねーもん。
よっぽど、相性よくねーんだよ。』
『だからぁ、黒尾さん、
俺はそれで三回も失敗したんだってば。』
『どーいうこと?』
客がいないのをいいことに
大将は、彼女からもらった焼酎を
ガッツリ飲みながら話し込む。
『俺はさ、
なんか偶然とか重なったりすると
"コイツが運命の女か?"って
もりあがったりしちゃうんだよなぁ。
映画とかテレビとか、見すぎ(笑)
だけど、結婚してみ。
ドラマチックな毎日の連続じゃ疲れるぞ。
でも、なければないで
"運命の人と結婚したのに
こんな平凡な毎日のはずがない。
相手、間違えたか?"って思ったりな。』
…"運命"も、考えようによっちゃ
面倒なもんだとは(笑)
『黒尾さん、
結婚は、ドラマじゃなくて日常。
何も起こらない、っていうのは、
結婚に向いてる相性のひとつだと
俺は思うけどな。』
