第27章 ウェディングプランナー
そうこうしながら
一時間ほどたっただろうか。
『さてと、片付いたけどな。黒尾さん、どうする?』
さすがにこれ以上は甘えられない。
『おい。』
…起きない。
『起きろ~。』
…起きない。
『置いてくぞ?』
驚くほどの勢いで
頭がガバッとあがった。
…悲鳴と共に。
『置いてかないでっ!! 』
俺も大将も、驚いて言葉が出なかった。
ぼやーっとした顔で
キョロキョロしている彼女。
『おい、帰るぞ?』
『…う、えぇと…』
『とりあえず、』
彼女のバッグを手渡してトイレに押し込む。
…今日から生理中って言ってたから…って、
俺、世話しすぎだよな(笑)
カウンターに戻ると、
鍵を握って待つ大将が
小さな声で俺に聞いてくる。
『…置いてかないで、だとよ。』
『よく知らねーんだけど…
手ぇ繋ぐの、イヤらしい。
キスもヤダって言ってた。』
『わけありか~。いいなぁ、
俺が優しく癒してやりてぇ(笑)
黒尾さん、好意ないなら、
俺が彼女、介抱しようか?』
『お?4回目の結婚と離婚、目指す?(笑)』
…そんなことを話していたら、
彼女がトイレから戻ってきた。
『…あの、いろいろスミマセン。』
『こっちこそ、飲ませすぎてごめんな。
これに懲りずに、また来てくれよ。
黒尾さんと一緒じゃなくても、おいで。』
『はい、大根とスジ食べに来ます!』
『おい、一人で来るときは気を付けろよ。
大将、見た通りのエロおやじだから。
あんな風に潰れたら、間違いなくヤラれるぞ?』
『黒尾さん、言葉、選んでくれ~(笑)』
3人で店を出て、
大将とは、そこで別れた。
俺達は、とりあえず駅に向かって歩く。
彼女はちょっと千鳥足だけど、
手を貸すほどでもないようだから
…手を貸すと言っても拒否するだろうし…
俺が少し後ろから歩いて、見守る。
『…私、どのくらい寝てました?』
『一時間半、くらい。』
『くーっ!
最低のところを見せてしまって…
すみません。急がないと、終電が…走ります?』
『ムリだろ(笑)今ですら、斜めに進んでるぞ。』
ときどきシャツの裾をつかんで
歩道に引き戻す。
それでも、本人は急ぐつもりらしく、
小走りで進もうとする努力が
後ろ姿に見てとれる。
『おい、転ぶぞ!走らなくていいから!』