第27章 ウェディングプランナー
押し倒した身体は
細くて、軽くて、薄くて。
つかんだ肩先は
鎖骨から続く骨のラインが
くっきりと見える。
彼女の右手が上へと伸びた。
パチン。
フットライトと、
小さなスタンドライトの灯り以外は
すべて、消える。
『色気のない身体でごめんなさい…
見ると萎えちゃうかもしれないから
電気、ナシでお願いします。』
さっきまでの勢いは完全に消えた、
小さな声。
どっちがホントの彼女なんだろう。
俺の前で自分で脱いでから
もう、しばらくたつ。
温もりをなくした皮膚が
小さくでこぼこと鳥肌をたてているのが
薄明かりの中、指先に伝わってきた。
抱き締めて
シーツをかぶって温めてやりたい、
…と思うけど
そんなことは彼女は望まないはず。
とりあえず、
俺もバスローブを脱いで
素肌を重ねた。
少しでも、冷えないように。
このまま、
身体を離さずに出来ること。
キス…は、しない約束。
何なら出来る?
考えていると、
上から声が降ってきた。
『…あんなに挑発したくせに
キスするな、手を握るな、とかって
わがままばっかり、すみません。
ノコリモノのくせに、何様かってね…』
…これも、挑発か?
右手で彼女の口許を塞ぐ。
『ノコリモノって言うなって言っただろーが。
ノコリモノってのは、ホントーに、
最後の最後に残った時だけ言うんだよ。
まだ、立派に女だろ、
自分で、価値、落とすな!!』
…自分の言葉が、自分の胸にも響いた。
トーコには選ばれなかったけど、
俺もまだ、男としては終わってないつもり。
自分で価値、落とすんじゃねぇよ…
薄暗がり。
足元と枕元にだけ
オレンジ色の光が溜まる。
仰向けに寝たら
ほとんど平らになる胸の頂きに
左右それぞれ小さな影が伸びて。
右手で口を押さえ、
左手で両手を頭の上にからめとり、
舌先だけで乳首を舐めた。
『…フ…ゥ…ッ…』
押さえた口から声が漏れる。
喘げ。
喘げ。
声も、蜜も、垂れ流せ。
あんたが"ノコリモノ"じゃないことを
俺が証明してやる。
…女を前にして
"自分がイク"ことより
"相手をイかせる"ことを考えたのは
久しぶり、だった。
まだまだ
本気の喘ぎ声を引き出してやる。
最後に出てくんのは、
"ノコリモノ"じゃなくて
"イチオシ"の"オオトリ"ってことだ、
…って教えてやる。