第27章 ウェディングプランナー
…直前まで、抱かないつもりだった。
ただしばらく、
抱き締めさせてくれればよかった。
だから、まさか彼女…早瀬さんが
あんなことを言い出した時は、
正直ビビったし、
ちょっとヒいたくらいだった。
でも。
自分から全裸になって
自分の体を蔑みながら
俺を挑発してくるのが
彼女なりの
あまりに不器用な優しさだとわかって
気持ちが変わった。
『愛してたら出来ないことをしてみせて。』
『愛も優しさもいらないからイかせて。』
…って。
そんなわけ、あるか。
どんだけ諦めてんだよ。
女だろ?
愛してくれる男に
抱かれたいに決まってるじゃねーか。
優しく愛されながら
果てたいに決まってるじゃねーか。
なりゆきとはいえ、
ほとんどなにも知らない俺に
あそこまで晒した彼女は、
きっと
『本気で立ち直りたいなら
本気の努力を見せてみろ!』
と言いたいに違いないし、
その相手をしてくれる覚悟をもってる。
…女は、強いな。
それに応えなきゃ、
男じゃないだろ?
『うるせぇ。黙って犯されろ。』
激しい言葉で答えることで
自分へのスイッチをいれた。
トーコも旦那も帰ってくる。
旦那は間もなく、俺の上司だ。
子供が産まれりゃ、
むこうはますます家庭円満だろう。
俺ひとり、
こじらせたまんまでたまるか。
気持ちを切り替えるなら、今。
引きずって落ち込むのは、これが最後。
なんの関係もない俺の弱さと甘さに
身体を張ってつきあおうとしてくれる彼女に、
それを誓おうと思った。
激しく触れたら、ごめん。
でも、中途半端な優しさより、
あんたもその方がいいだろ?
多分、お互い、わかる。
激しさの本当の意味。
挑発の向こうの思い。
わかってくれる人が
たった一人でもいるなら、
立ち止まってはいられない。
なりゆきのベッドインだけど
真剣勝負だ。
愛は、まだない。
でも、
裏切りたくない。
必ず立ち直るから。
必ずイかせるから。
ちょっとだけ、頼らせてくれ。
ちょっとだけ、甘えさせてくれ。
…不器用だよな、
俺も、あんたも。