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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第27章 ウェディングプランナー



『ごめん、酔いを覚ましてたら遅くなった。』

黒尾さんが、バスルームから出てきた。

真っ黒な髪が全部、おりてて…
乾いたばかりのその髪をかきあげる姿。
ドキン、と鳴った自分の鼓動には
気づかなかったふりをする。

『入ってこいよ。』

『はい。』

今度は、私がバスルームへ。
…化粧は落とさないほうがいいよね。
素顔を見せる間柄じゃないから。

その分、体を念入りに。
備え付けのカミソリとクリームで
一応、自分でできる処理はして。

洗える場所は、すべて念入りに。
貧相な体なりに、失礼のないように。

バスルームを出て体を拭き、
バスローブをはおって鏡を見る。

強い私で、いなくちゃ。

弱ってる黒尾さんの心が
どんな方向に崩れても、
支えてあげられるくらい、強く。
受け止めてあげられるくらい、強く。

私の弱さに気を遣わせないように。
私、愛されてるかも、なんて、
一瞬でもバカな勘違いをしないように。

鏡の中の自分に言い聞かせて
踏み出した。

壁際に、大きなベッド。
黒尾さんは、
真っ白なシーツのなかに脚だけ入れ、
体は起こしたままで。

ゆったりとゆるんだ
バスローブの胸元が色っぽい。

『来いよ。』

ベッドの空いた半分に呼ばれる。

ススッと近付き、ベッドにあがった。

なんとなく、何もなく。

枕元のデジタルに目をやると
10時をすぎてる。
多分、泊まらないだろう。

『…あの、どうぞ。時間も、ないですし。』

ガバッと覆い被さった黒尾さんは、
私を押し倒して…

押し倒し…

押し倒、さないまま
背中に回した腕にギュッと力をこめて。



耳元に近づいた唇から、

『ごめん。こんな誘い方して。』

黒に近いほど深い、
紺色のつぶやき。

『唇も手も触れたくないヤツに
抱かれるなんて、ヤだよな。』

その紺色は、静かな闇のよう。

『でも…今だけ、
こうやってさせててくんねーかな?
なんも、しねーから。』

言葉はもはや闇に溶け、
鉛のように沈んでいく。

目の前で、沈んでいく。

今、彼を救いあげられるのは
私しかいない。

『黒尾さん、冗談じゃないですよ!』

出来るだけ、
空気に逆らうトゲのある言葉を。
甘い痛みに溶けていく黒尾さんの
感覚に突き刺さるように。


『ふざけないで。甘えないで。』

お願い、黒尾さん、
こっちを向いて。


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