第27章 ウェディングプランナー
ラブホテル。
久しぶりに入る。
前にいつ来たか、
もう思い出せないくらい。
…とはいっても、
ここは私が今まで行ったラブホの中で
一番、品がいいような気がする。
黒尾さんの好み?
いや、多分違う。
黒尾さんは、こういう時に
自分のこだわりを主張するような人じゃない。
いつも、相手のことを考えてる。
…多分、私に気を遣ってくれてる。
そんな優しさ、いらないのに。
部屋に入ると、
黒尾さんが先に口を開いた。
『シャワー、浴びるよな?』
『私、後でいいです。先、どうぞ。』
『わかった。じゃ、先に。』
バスルームに消えていく背中を見送り、
自分の体を見下ろす。
…下着、何つけてたっけ?
無駄毛の処理、してたかな?
男日照りにかこつけて
自分のメンテナンス、手抜きになってた。
女、失格の自覚、あり。
なのに、
誘われて、ドキンとした。
前みたいにキレイゴト言われるより
嬉しかった。
…そんな自分に、驚いた。
優しくして、なんて思わない。
むしろ、
気持ちは一切、入れないで欲しい。
出来るだけ、冷たく。
出来るだけ、ひどく。
出来るだけ『代替え品』らしく。
私は、抱かれたいだけ。
黒尾さんは、今夜をしのげればいいだけ。
お互い、
そこに愛情は一切、ないから、
快感だけを、ハッキリと。
…そう思う一方で、
音駒メンバーの結婚式や
夜久君達の前にいるときの
"頼れる主将"とは違う
どこか孤独な黒尾さんの姿を見ると
なんとかしてあげたいと思ってしまう。
きっと、ウェディングプランナーの
職業病に違いない。
二人揃って幸せな顔をしてほしい、
と思う職業病。
そして、一瞬、よぎる。
今夜、黒尾さんが
何から逃げたいのかは知らないけど、
きっと彼女に関わることだ。
…あれだけ紳士で
あれだけモテる黒尾さんに
あんな切ない顔をさせる女性。
黒尾さんが
横にいてほしいと願う女性。
どんな人なんだろう…
言いたくないけど、
私とは、きっと、正反対の人。
最後に選ばれるのは、そういう人。
大丈夫。
私、メンタル、頑丈だから。
支えることなら、出来るはず。
いつか
黒尾さんとその人の披露宴、
私が担当したいな。
だから、今のピンチを乗り越えてもらうために
(プランナーの領域は明らかに越えてるけど 笑)
黒尾さんの役に立ちたい。