第27章 ウェディングプランナー
驚いたように腕をほどき、
黒尾さんの身体が離れる。
触れていた部分の温もりを
冷えた空気が消していく。
そのまま、心も、冷えますように。
優しくなくていい。
鬼のままでいい。
湿った甘えは、心を腐らせる。
心のドア、私がこじ開けるから
新しい空気を入れて、心を乾かして。
今は、自分のことだけ考えて。
黒尾さんの引っ込みがつかないくらい、
煽るから。
大きく、息を吸う。
『ここまで来て抱けないって、
どんだけ失礼なんですか?
だったら最初から中途半端に
誘ったりしないで下さいよ。
そりゃ確かに、黒尾さんのまわりには
たくさん、いい女がいるでしょ。
…こんな貧相な体の女、見たことあります?』
自分で、バスローブを脱ぐ。
ブラもショーツも、脱いだ。
自分でいうのもなんだけど、
本当に、大したことない体。
胸もお尻も小さくて
スリム、というより痩せっぽっち。
そそるような要素は全くない。
メリハリのメの字も
イロケのイの字も見当たらない…
自分で言ってて、哀しくなる。
『だけど、抱かせろって言ったのは
黒尾さんですからね。
今になってやっぱヤメタとか言うなら
それこそ、私、笑われるために
ここまで来たってことですか?』
黙って私を見ている黒尾さん。
『何にとらわれてるのか知りませんけど、
そのこと忘れるくらい、
メチャメチャにシてみたらどうですか?
…愛してる人には出来ないようなこと、
いっぱい、して下さいよ。
…それとも、こんな女じゃ勃ちませんか?』
まだ、黙ってる。
『あぁ、腹が立つ!
じゃ、私が勝手にヤります。
逆らわないで下さいよ!』
シーツを剥いで
黒尾さんの足元に座り込もうとした時
やっと、声が聞こえた。
『やめろ。わかったから。やめろ。』
絞り出すような、声。
『俺が、抱く。』
…そう言ってるのに、
身体は動いてこない。
まだ、心の鍵が外れてない。
本当に、優しい人。
煽るのも胸が痛い。
けど…
もうちょっと。
もうちょっと。
『愛とか優しさとか、いらないですから。
イかせてくれるだけでいい。
…そんなセックス、黒尾さんに出来ます?
愛されるのが当たり前、みたいに
仲間やいい女に囲まれてきた黒尾さんに
私みたいなの、相手できます?』
『うるせぇ。黙って犯されろ。』
…やっと、押し倒してくれた。