第27章 ウェディングプランナー
裏通りの店からホテル街へ。
黙って、歩く。
やっぱりお互い、自分の歩幅で。
…少しだけ、
ゆっくり歩いたつもりだけど。
さっきとは逆に、今度は俺が前。
でも、俺も、振り返らなかった。
もし途中で彼女がイヤだと思ったら
そのまま消えてしまえるように。
大きな歓楽街の近くだ。
ラブホもたくさんある。
…愛し合ってるわけじゃないのに
抱かせろ、と言った手前、
ケチって素人を抱く、みたいに
思われたら申し訳ない(?!)と思い、
あまりギラギラしてない、
ちょっとしたリゾートホテルみたいな
清潔感のあるところを選んだ。
…そんなことに気を使うのもどーかと
自分でも思うけど。
どこか、後ろめたい、んだろうか…
ホテルの前に着いて、
初めて後ろを振り返ってみると…
少し向こうから、ちゃんとついてきてた。
うつむくわけでも、寂し気でもなく、
淡々と。前を向いて。
ホテルの前に到着した彼女に
一応、聞いてみる。
『今ならまだ、止めれるぞ。』
『いいですよ。行きましょ。』
スタスタ、と中へ行こうとするから
『ちょ、待てよ!』
あわてて後を追う。
後ろから手を掴んだら、
予想もしない勢いで、振り払われた。
『…あ、ごめんなさい。』
『やっぱ、ホントはヤなんじゃねーの?
そんなら、今のうちに言えよ?』
『黒尾さん、』
俺の方をまっすぐ向いて言う。
淡々と。
『黒尾さんみたいな
遊びのベテランさんからしたら
バカだと思うかもしれないんですけど、』
ベテラン、ってどーいうことだよ(苦笑)
『抱いてもらう身で
わがまま言っていいですか?』
いや、
こっちが抱かせてもらうんだけどな。
…と思ったけど、声には出さず、頷く。
『あの、遠慮せず、最後まで
シてもらっていいんですけど、でも、』
でも?
『…キスは、しないで。
それと…手を握らないで、って
そんな勝手なお願い、アリですか?』
…キスは、わかる。
時々いる。
好きなヤツとしかキスしない、ってタイプ。
でも、手を握るな、って。
『キスはわかるけど…手は?
ケガでもしてんのか?』
『いえ、違いますけど…』
今まで言われたことない注文に、
興味が湧いてしまう。
『何でだよ?』
フ、とため息をついて。
『離すのが、辛いから。』
…胸が、締め付けられた。