第27章 ウェディングプランナー
最初のビールのあとは、
焼酎を飲みながら、話した。
オススメの焼酎を
私の好きな割り方で作ったら
黒尾さんはおいしそうに飲んでくれて。
『一人飲み、するんだろ?』
『します…焼酎は、ゆっくり飲めるし
割り方でペース配分できるから。』
『一番、酔えるのは?』
『濃い目のお湯割りでしょうかね?』
『じゃ、次はそれにして。』
…水割りに氷をたくさん入れて渡す。
『はい。』
『お湯割りじゃねーじゃん。』
『ここで泥酔されても困ります。』
『酔わせてくんねーの?
俺、今日、心が弱ってんの。』
『泥酔は家飲みの時にして下さい。
私、こんなでっかい人、介抱できませんから。』
『なんだよ、冷めてーなぁ。
そこは大人の飲みってことでさぁ…』
少し、酔いがまわってるみたい。
気持ちが、こぼれ始めてる。
…わかる。から、止める。
『お酒でごまかしても悩みは消えませんよ?
介抱は出来ないけど、話なら聞きます。』
『…』
黒尾さんの大きな手の中に
包み込まれるグラス。
長い、指。
あの指で触られたら
どんな気分だろう。
うつむき加減の横顔。
あの瞳で見つめられたら
どんな気分だろう。
…カウンターにしといてよかった。
向かい合って座ってたら、
とても顔見て話せない、きっと。
カラカラカラカラ…
氷を溶かすようにグラスを振って。
カラ…ン。
黒尾さんの手のひらの中で、
氷が水に馴染む音。
少し、
心が、
溶けたような、音。
『…謝りたかったのもあるんだけど、』
『?』
『この間のこと。でももういっこ、
今日はホントに、相手、してほしくて。』
『…私に?』
『そう。』
『どうして?』
『だってあんた、俺のこと、
主将って呼ばねーだろ?
クロなら何とかしてくれる、とか
おい黒尾、あとはヨロシク、とか
言わねーだろ?』
『…言うわけないです。
私の主将でも上司でもないし。』
『頼られんの、好きなんだけど。
…時々、俺も誰かに頼りたくなる。
超 時々な。でも、頼り方も
誰に頼っていいかも、わかんねぇ。』
『いっぱい、仲間、いるじゃないですか。』
『アイツラにとって、俺、主将だから。
頼られる存在でいたいんだよな。
俺のつまんねープライド。』
…黒尾さん。
それは、寂しい、って言うんだよ。
優しすぎる、孤独。