第27章 ウェディングプランナー
『あれは大人のやり取りでしょ?
あの流れで"ヨシじゃぁ、寝ようぜ!"
なんて言って許されるのは、
木兎さんくらいだと思います。』
黒尾さんが驚いた声を出す。
『木兎?ヨントリーの木兎?知ってんの?』
『もちろん!だって…』
木兎さんがうちで式を挙げたこと。
赤葦様や木葉様のことも。
『写メ、見ます?』
『見る見る!おぁー、ホントだ!
コイツらには、肝心なときに
いつも勝てなかったんだよなぁ。』
『夜久君もそう言ってました。』
私のスマホの写真を次々とスクロールしながら
『烏野じゃん!』
『これ、木葉君の嫁?美人!』
…などと懐かしそうな顔で
しばらく見ていた黒尾さんは、
フと顔をあげて、言った。
『あんた、仕事以外の時間、何してんの?』
『…え?』
『だって、仕事の写メばっか。
なんか、スイーツとかランチとか、
ネコとか空とか女子会とか…
そういうの、1枚も出てこねーって
どんな暮らし、してんだよ?』
女子ってそんなもんなの?
気にしたこと、なかった。
全然、平気なんだもん。
『仕事以外の時間…
んー、家でたまった家事してるか、
雑誌読みながら飲んでるか、ですね。』
『…おっさんか(笑)てか、俺と同じじゃん。
雑誌も、ファッション誌じゃねーだろ?』
『そうそう、
仕事関係のゼクツィとか日経トレンヂィ。
ホント、私、終わってる(笑)』
『仕事、好きなんだ。』
『職場には私の居場所があるし。
それに…仕事は裏切らないし。』
『…男と違って?』
『アハ、失礼しました。
今の言い方だとそうとも聞こえちゃいますね。』
『むしろ、そうとしか聞こえねー。』
『…皆が皆ってわけじゃないってことは、
わかってるんですけど。』
『裏切る男に当たってきた、か?』
やめて。
そこに触れないで。
それを言われると、途端に駄目になる。
『…』
『信じていい男もいるよ、多分。』
『黒尾さんは…どっち?』
『…裏切りたくない、って思っては、いる。
男も、女も。』
だよね。でも。
『…みんな、そう言うでしょ?
"俺はバンバン裏切るよ~"って
言う人は多分いないし、
もしいたら、
それはそれで正直で感じいいくらい。
最初から信じないから
裏切られもしないし(笑)』
『だな。(笑)』
…よかった。
これ以上、古傷に、触れないで…