第6章 ウェディングブーケ
今まで聞いたことがないような、
及川の、穏やかで、優しい声。
『普通の女の子はさ、
自分が特別扱いされないと、
みんなすぐに、俺を通りすぎていっちゃうんだ。
でも俺、
特別扱いしなくても
そばにいてくれる人がいい。
俺のことも、
特別扱いしないでいてくれる人がいい。
さっきの取材中に
急にプロポーズしようって決めたから
指輪もないんだけど…』
及川は、
ブーケを差し出して言った。
『早瀬。
今、ここにいてくれるのは
35億分の1の奇跡なんだってね。
俺の前を通りすぎないでいてくれて
ありがとう。
…名前、呼んでもいいよね。
アキ
ねえ、アキ。
俺と、
ずっと一緒にいてくれる?』
『及川…』
『じゃなくて?』
『…ト、トオル…』
…私、抱きしめられてる?
上から羽根がふってきてるのは何で?
35億分の1って、何の確率?
どういうことなのか
全然わかんないけど、
涙が止まらない…
…月島君、
明日、キッチリ説明してもらうからね…