第27章 ウェディングプランナー
以来、月に1度か2度、
彼女が上京してくる度、
夜、こうして、ホテルで会う。
東京では、外では一切、会わない。
誰に見られるか、わからないから。
その分、年に何度か、遠出した。
人に見られないように、
現地の駅や空港で集合。
倉敷や角館、
飛騨に金沢、
北海道や九州も。
トーコの好きな古いキレイな街並みを
人目を気にせず腕を組んで散策し、
二人で温泉に浸かって
おいしいものを食べて
地元のお酒を飲んで
浴衣でセックスして…
帰りは、また、現地解散。
思い出だけを共有して、
トーコは神戸へ、
俺は東京へ、一人で戻る。
そんなつきあいが、もう
3年、続いていた。
俺にとっては、
この関係、居心地がよかった。
たまにしか一緒にいられないから、
その時間を、濃厚に楽しむ。
1秒も無駄にしたくない、二人だけの時間。
…それが、終わる。
わかってるけど、抵抗してみる。
『普通さぁ、終わるときって、離れる時じゃね?
近くに来んのに、別れんの?』
『東京に戻ってくれば、
どこで誰に見られてるか、わからないもの。
それに、テツロウだって、
このままの状態で夫が社内にいたら
仕事しにくいでしょ?』
そりゃ、そうだけど。
でも、そんなことより
別れる方が辛いから。
…だから、強がりを。
『んなこと、ねーよ。俺は平気だけど。』
『そんなこと、あるって。
テツロウ、有望株だもの。
こんなことで自分の評価、
落としたりしちゃダメ。』
こんなこと。
だよな。
上司の奥さんと寝る、って
どう考えたって、分が悪い。
『…ね?』
どんな時も
慌てたり泣いたりしない
ゆったりとした彼女。
別れを告げるときも。
…大人、なんだな。