第27章 ウェディングプランナー
耐えきれず、話しかけた。
『…なんだよ。』
『?』
『なんか、言いたいこと、あんだろ?』
『どうして?』
『…ちょっとづつ、いつもと違う。』
彼女は、
目線をそらして、
ため息をひとつ。
『テツロウは、何でもお見通しね。』
『…』
『何から話そうか?』
『いいニュースから。』
『…残念ながら、』
彼女がこっちを見て。
悲しげに、でも、ハッキリと言う。
『いいニュースは、ひとつもない。』
『なんだよ、それ。何ならあんの?』
『残念なニュースと、悲しいニュース。』
『…じゃ、悲しい方から。』
『悲しいニュースは…
テツロウ、お別れの時が来ちゃった。』
細い細い三日月が、
完全に雲に隠れる。
俺の心の
わずかな光を消すように。
『…残念な方は?』
『残念なニュースは…
東京に戻ってきます、夫も、私も。』
『…なんで、急に?』
彼女は、自分の体の真ん中に
目線をおとして…
『子供が、できた。』
『…俺の子、じゃねーな。』
『もちろん、夫の。』
『セックスレスじゃなかったんだ。』
『半年に1回くらい帰国するから…
彼は子供が欲しいから避妊はしないし。』
『…ふーん。いつ、こっち戻んの?』
『ちょうど次の春に夫が本社に戻るから
それにあわせて。
私も一旦、仕事辞めて夫と一緒に
東京で暮らすことになったの。
とりあえず、産休ってところ。』