第26章 ~恋ネコ⑥~ 留守番プロポーズ
月曜日。
研磨は、大きなトランクを引っ張って、
出発していった。
今日から一週間、
研磨のいない生活が始まる。
火曜日。
一緒に行ったスタッフから
メールでの日報が届いている。
特に問題なく、仕事も順調なようだ。
研磨がいないと、夜が長い。
暇なので、久々に会社で残業した。
…家に帰っても
世話する相手がいないと、つまらない。
食事も、コンビニで済ませた。
水曜日。
わかってはいるし、いつものことだけど
とりたてて、誕生日のメールなどは、こない。
それが研磨らしさだと、誰よりも知っている。
一人で飲みに出掛けるほど酒好きでもないので
今日は、真っ直ぐ家に帰って…
たまには長湯しながら
パックでもしようかな。
…そう思って帰宅し、
すっかりくつろいだ時だった。
スマホが、なってる。
研磨?!
…いや、そんなことはなく。
表示は"黒尾君"。なんだろう?
『もしもし早瀬?今、どこ?』
『家。』
『よかったー、家にいるんだな。
部屋、何号室だっけ?』
『805。』
…ピンポーン。
電話と同時にインターホンが鳴る。
『え?今の、黒尾君?』
『クロオネコ宅急便でーす。』
『ふざけてる?』
『お届け物。開けろよ。』
…?そこに、いるの?
マンションの入り口を開けてしばらくすると
今度はうちのインターホンが鳴る。
『イタタタ、いてーよ…やめろって…
おーい早瀬、あけろーっ。』
いたたたた、って?
やめろ、って?
誰かと一緒?
急いで玄関ドアを開けると、
やっぱり黒尾君。
…一人。
『お届け物の配送デース。
送り主は、孤爪 研磨様。ほれ。』
え?
黒尾君のコートのポケットから
出てきたモノを見て驚く。
これって…プレゼント、なの?