第26章 ~恋ネコ⑥~ 留守番プロポーズ
『…もしもし、クロ?
ちょっと、頼みがあるんだけど。』
『なんだよ、
天下の研磨社長に頼まれたら断れないじゃん。』
『そう思うなら、来て。』
『電話じゃダメなんだ?』
『全然、ダメ。ナマモノだから。』
『ナマケモノ?』
『ナマモノ…来てくれるよね?』
『なーんか、めんどくせぇ予感がするけどなぁ。
とりあえず今夜、顔出すな。』
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『遅くなった、ごめん。で、頼みってなんだ?』
『…おれ、明日から一週間、出張。』
『別にフツーじゃん?』
『水曜日、早瀬の誕生日だから。』
『へー。あ、ナマモノって、
ケーキでも届けろってことか。』
『違うよ。
早瀬は一人でケーキ食べる人じゃないし。
だいたい水曜のケーキ、今日、渡さないし。』
『じゃ、なんだ?』
『水曜になったら、コレとコレ、早瀬に、届けて。』
『…うわっ!
ちょ、これ、ナマモノどころじゃねーだろっ?!
水曜までどーすんだよ?!』
『…だからクロにしか頼めなかった。』
『俺は宅急便じゃねーぞ?』
『でも、恋愛レスキュー隊だって。』
『むむっ、その響きは…夜っ久んか?』
『うん。やっ君とこ、うちの取引先だから。』
『これ、仕事、関係ねーだろ(苦笑)
…こっちは?…え、これ…』
『うん、書いてある通り。』
『…お前さぁ、
いくらなんでも、もちっとそれなりに、
なんかこう、包んだりとかしねーの?
段ボールとビニール袋って…
事件現場の証拠品じゃあるまいし。
あんまりじゃね?』
『仰々しいの、ヤだから。わざと箱から出した。』
『ヒネクレモノ(笑)…てか、
俺が渡していいのかよ?』
『任せる。』
『でもさぁ…』
『クロならうまくやってくれる、…って。』
『また夜っ久ん?!そこも夜っ久んかっ!!
なんだ、お前ら、想像以上に仲良しかっ?!』
『ね、クロ、頼むね。
クロにしか、頼めない。』
『…くーっっ、お前に頼まれたら、
俺は断れねぇようになってんだよなっ!
いいよ、頼まれるよっ。
お前らの幸せを見届けるまでが主将の仕事だっ。』
『クロ、うまくやっといてね。』
『人使いの荒い社長め!配送料、高くつくぞ!』
『…婚活パーティー、優先的に入れてあげる。』
『ケッコーですっ!』