第26章 ~恋ネコ⑥~ 留守番プロポーズ
テレビ局の帰り道。
移動は、電車。
ハイヤーなどは使わない。
食事も、フツウのファミレスや
ファストフードや定食屋しか行かない。
…研磨とは
プライベートのパートナーでもあるけれど、
それでも、いわゆる"デート"というのは
1度もしたことはなくて。
研磨はそもそも
食べることに興味がないし、
移動中や食事中に
人や風景を観察することが
次のアイディアに繋がるから
行き先や移動方法を選ぶ基準は
"食べたいもの"や
"行きたい場所"ではなく
"ネタ"がありそうなところ。
人を観察するけれど、
相変わらず、
人に興味はない。
ここ2年で、研磨にとって
街行く人や風景は、
次の自分の"ゲーム"の"アイテム"に
見えてきたらしい。
ビジネス、という"ゲーム"の
企画、という"アイテム"。
それまで、
小さな画面を見つめてた研磨の視点は
ぐんと高く、広く、
宙から地上を見下ろすようになった。
感度の高い人工衛星のように
広く、先まで、奥まで、冷静に。
眺めて、分析して、情報に変換する。
そんな研磨を見ているのが
私は何より面白くてしょうがない。
『…ねぇ、今日のトーク、どうだった?』
『面白い話に広がったじゃない。
私も初めて聴くエピソードもあったし。』
『誉めなくていいって言ってるじゃん。
改善点、教えてよ。』
『…今日のタイプのインタビューには
ハード面の詳細は、不要ね。
さりげなくソフトの話に繋げて。
あと、相手の話には、
いちいち、反応しない方がいいかな。
相づちは基本、声、出さないで顔だけで。
だけど、カットされたくない話のときは
相手の言葉にガッツリ被せて答えて。』
『…わかった。』
考えてる顔。
聞き返してこないのは
理解した証。
自分なりの言葉にして記憶する。
これでまた、研磨は、光を増す。
私にはない力を持つ彼。
どうしようもなく魅力的。
今まで、男性に対して
こんな気持ちになったことは
1度もなかった。
"仕事の出来る男"と
"恋愛対象"はベツモノで
…多分、私は、男脳、なのか…
どちらかというと色恋は
欲のはけ口であればよかったから
セックスが出来ればよくて、
"恋愛"にするのは面倒くさかった。
でも、研磨は。
この賢い彼の、
セクシャルな顔も、
たまらなく魅力的。
今日の研磨は…
どっち?