第26章 ~恋ネコ⑥~ 留守番プロポーズ
研磨と出逢って2年。
彼は、思った以上のスピードで
輝きを増していると思う。
…強い光ではない。
静かだけど個性的な光。
他とは違う輝きだから人は興味をもつ。
それが研磨の光。素晴らしい、才能。
"面白いアイディアを持ってるヤツが
いるんだけど、話、きいてみない?"
MBAの資格をとるため、
仕事の後に通ってた
経営大学院で知り合った黒尾君に
紹介されたのがきっかけ。
研磨と初めて会った瞬間に、
他の人とは違う何かを感じた。
"この人とは、必ず何か縁がある"って。
数字が好きな私にしては珍しく、
非現実的な、証明できない何かに
心を動かされた。
研磨には、
それほどインパクトがあったのだ。
話してみて、
ますますその想いは強くなった。
アイディア。視点。展開。
どれも私が全く持っていない
斬新なもので、
それなのに、
その才能の使い道がわからず
もて余している。
『ね、今の話、すぐ実現しよう。
人より先に、ビジネスにしようよ!
…私、今の会社、辞める。
孤爪君の才能に、投資するから。』
前のめりで話す私を
冷ややかな目で見る研磨と
大笑いしている黒尾君。
しばらくして
笑いがおさまった黒尾君は、
私のほとばしりすぎた想いを
研磨に分かりやすく、
そして魅力的に聞こえるように
説明してくれて、
そして
『研磨、
コイツと一緒にベンチャーすんのは、
多分、お前が今までクリアしてきた
どのゲームより遥かに面白いことは
間違いないぜ。俺が保証する。』
と、研磨の心を一番くすぐる言葉で
口説いてくれた。
その一言が、よほど研磨に響いたらしい。
『…おれ、金儲けはどうでもいい。
そのかわり、
それ以外の決断はおれにさせて。
いっとき、負け試合に見えても、
おれが、"負けた"って認めるまでは
途中で止めさせないでほしい。
それを約束してくれるなら。』
と、本当にゲームでも始めるように言い、
もちろん私はそれをOKして、
その瞬間から、私たちは、まず、
ビジネスパートナーになった。
"プリンヘッド"という会社の名前は
その時、黒尾君がつけてくれた。
お酒を飲みながら
ゲラゲラ笑いながらつけた
ふざけた名前だったけど、
これも私は気に入っている。
…こうやって、
衝撃的に始まった、私たち、だった。