第26章 ~恋ネコ⑥~ 留守番プロポーズ
『本日のゲストは、
SNSを使った趣味限定婚活パーティーが
今、全国で爆発的人気、と注目のベンチャー企業
"プリンヘッド"代表 孤爪研磨さんです。』
テレビ番組の収録が始まった。
快活ではないけれど、
それがかえって珍しさ…というか、
ベンチャーぽさを出していて人気の
研磨のトーク。
(まぁ、本人は、マスコミ対応は
好きじゃない言ってるけれど。)
『この企画を考えたきっかけは?』
『…自分がずーっと
バレーとゲームしかしてこなかったから
それ以外の会話って苦手で。。。
自分が婚活したかったわけじゃないんだけど
同じ事を、高校の頃の部活のコーチが
愚痴ってるのを聞いて、
"最初から趣味を限定した婚活にしちゃえば
みんな同じ話題で繋がれていいじゃん"と
思ったのがきっかけです。』
『趣味、というくくりだと、
バリエーションも広いですね。』
『…はい。特にゲームとかマンガとかは
興味ない人とはゼンゼンでも、
好きな人同志だとすごく盛り上がるんで。』
『それでは、この婚活での結婚第1号、
直井さんご夫婦にお話を伺いましょう。
直井さんは、先程の話に出てきた、
弧爪社長の部活のコーチだそうですね…』
頭のいい人だ。
"話すの、苦手…"というけど、
受け答えには何の心配もない。
むしろ相手のニーズをきちんと汲み取れるから
インタビューの依頼は多いくらいで
最近は本人も、相手との駆け引きを
楽しんでいるようにすら見える。
カメラのこちら側から見守る私は…
今は、マネージャー、という立場。
研磨は、儲けそのものにはあまり興味がない。
人の心の動きを読むのが得意だから
取引先との駆け引きや、
世の中の流れを見て新しい企画を考えること、
そして、
その独特の個性を活かして、
会社の広告塔としてのマスコミ対応が
彼の社長としての主な仕事。
私の専門は経営だから、
会社では、
数字の管理をする立場でもあり、
秘書的な仕事もしている。
そして…
プライベートになれば
研磨の…なんだろ?パートナー?
"彼女"なんて甘い言葉、
研磨は絶対、使わない。
メンタルの管理。
セックスの相手。
どちらも私はやりがいを感じている。
研磨は、私が見つけた、最高の宝物。
彼を光らせるのが
彼を安らがせるのが
彼を埋もれさせないことが
私の人生の、生き甲斐。