第6章 ウェディングブーケ
撮影当日。
片手で頬杖をつき、
もう片方の手でグラスを持つ及川。
カメラマンのリクエストに応えてポーズを変えながら
何度もフラッシュが光る。
スポーツ選手とは思えない、
大人の男の雰囲気。
さわやかだけど、どこか、エロい。
チャラいのに、
なぜか“遊び人”というより
“華やかな紳士”に見える
この感じ。
確かに他のスポーツ選手では
ちょっと出せないだろう。
及川はやっぱり、別格だ。
撮影と同時に進むインタビュー。
『休みの日は、何してる?』といった
無難な質問から始まり、
『好みの女性のタイプは?』
『どんな恋愛がしたい?』
『結婚観は?』
…など
月刊バリボーでは絶対に聞かれないような
女性誌ならではの質問が続く。
一応、お目付け役として
俺と早瀬さんが同行してるが、
こんな時の及川は、実は全然心配ない。
ちゃんと、営業用の答えが出来る男だ。
『それでは及川さん、最後の質問です。
及川さんの、理想のプロポーズは?』
『プロポーズ?
わぁ、考えたことないなぁ。
うーん、でもそれは…ナ・イ・ショ。
大事な人の前で、
初めて口にしてあげたいから。』
『やだ~、もう及川さんったら、
どこまでも完璧、王子様!』
…女性記者たちは、完全に及川のとりこ。
頬を上気させてうっとりしている。
この後、俺はまた、彼女達との合コンを
セッティングさせられるのだろうか。
そして早瀬さんは、その後、
及川に抱かれるのだろうか?