第25章 ~恋ネコ⑤~ 雨降りプロポーズ
クラッカーの音を合図に
手拍子をしながら、
観客席のお客さんが二人、立ち上がり、
歌を歌いながらダンスを始めて…
その数は少しずつ増えて、
観客席に残っていたお客さんも加わり、
そしてまるで
たまたま通りかかったかのような顔で
さらに参加者増加!!
…みんな、チア部の仲間や、
チア部に応援してもらってた
バレー部の仲間。
ここ数年流行りの
"フラッシュモブ"というヤツを。
チア部指導のもと30人ちょっとの
サプライズ。
最後のワンフレーズは、俺も参加して。
♪I think I wanna marry you ♪
たまたまなんだけど、
ダンスがキマッた瞬間に
ちょうど最後の花火がドドドーン🎆
とあがって、
なんだか、
プロモーション映像みたいなキメ。
雨、むしろ降ってくれてよかった?!
『そーちゃん…みんな…』
言葉がでないアキちゃんを
さらに驚かせる人が、ここで登場。
『おい、そータロー、アキを大事にしろよっ。
アキ、ハデなプロポーズされやがって。
俺が結婚するときはお前らも手伝えよ!』
…俺を"そータロー"と呼ぶのは
この世にこの人ただ一人。
『お兄ちゃん!』
『おい、そータロー、
落としても目立つように、
オマケつけといたぞ。ほらっ。』
お兄さんが投げてくれた
パンパンの綿菓子の袋には、
さらにちっちゃな袋がついていて、
そのなかに、指輪~っ。
(言わなくてもわかると思うけど、
オマケは、指輪じゃなくて綿菓子の方!
指輪は、ちゃんとしたヤツですっ!)
指輪をはめてふと気がつくと、
雨はあがってました。
まるで、
俺達だけの舞台を作るために
降って、止んだみたいに。
プロポーズがうまくいって
本当に幸せな俺を現実に引き戻すように、
"ふぇーっぷしゅぃっっ“
山本先輩のハデなクシャミが。
『おいっ、帰るぞ!風邪引く!』
『大丈夫、とらちゃん、
風邪、ひかないタイプ。』
『…アッキー、それ、俺がバカってこと?』
『そんなこと、まだ言ってない。』
『まだ、って?!』
『…あの…とりあえず、帰ります?』
『犬岡、お前が言うか?!』
『どうどう、とらちゃん、落ち着いて…』
みんな、笑ってる。
俺、"普通"の男だけど、
出会いに恵まれてるから。
もう、充分、幸せです!