第25章 ~恋ネコ⑤~ 雨降りプロポーズ
皆さん、俺の話の始まり、
もう忘れてるかもしれませんが…
そんなわけで、
今日はいよいよ、プロポーズ予定日。
天気予報が気になるけど…
待ち合わせの場所で
手を振るアキちゃんは
青地に黄色い朝顔の浴衣。
俺は、紺の絣。
…あの、最初にキスした花火大会。
毎年、二人で行ってるんです。
今年でもう…5回目くらいかな。
俺が
ここでプロポーズしたいって言った時、
山本先輩は『人が多い所は危険だ!』
と、頑固に反対してました。
…なんか、苦い思い出でもあんのかな?
だけど、
最終的には乗っかってくれて。
合図を出す、大事な役割を
引き受けてくれました。
アキちゃんと
一年前と同じ道を歩き、
一年前と同じようにかき氷を食べ、
一年前と同じように花火を見上げて、
一年前と同じように、小さなキスも。
…だけど、
天気予報は当たりませんでした。
これから花火もクライマックス、
という時に、雨が、ポツポツと。
花火は上がり続けてるけど、
まわりの人達は、だんだんと
雨を避けてその場を去っていきます。
ガラガラになった観客席。
…う…どーしよ。花火、終わってから
プロポーズするつもりだったんだけど。
『そーちゃん、雨、ふってきたね。』
『うん…でもほら、
小雨だから、やむかもだよ。』
『…そーちゃん、雨、やまないね。』
『…うん、でもほら、まだ、花火、
あがってるし。』
♪ピンコーン♪
LINEの着信音。
スマホをソッと取り出すと
山本先輩から。
"早くしろ、バカ!"
"はいっ!"
"はーやーくー💢
場所もあいて、かえって
ちょーどいいじゃねーか!“
うぃーーーっっっ…
予定とはちょっと違うけどもっ!
『アキちゃん、』
『そーちゃん、帰る?』
『結婚…』
『ん?』
花火の音に負けないように、
大きな声で。
『俺とっ、結婚して下さいっ!』
『へっ?!』
『結婚、してくれる?』
『そ、そーちゃん?!』
『いい?ダメ?』
『ダメなわけ、ないじゃん!』
…♥OKサインの、キス♥…
『あぁ、待ちなげーぞ、バカッ!』
『風邪、ひかせる気?!』
パンパンパ~ン!
…とクラッカーを鳴らしながら、
他のお客さんに紛れて隠れてた
山本先輩夫婦が、俺達の後ろから登場。
さらに。