第25章 ~恋ネコ⑤~ 雨降りプロポーズ
アキちゃんは、スゴイ。
最初のうちは失敗談ばかりが
クローズアップされてたお弁当。
でも、だんだんと
隠し味や裏技の方が気になるような
ちゃんとしたお弁当になってきて。
それと同時に、
俺達も一緒に過ごすことが
特別ではなくなってきて、
まわりのヤツらからは
『お前ら、付き合ってねーの?!』
とビックリされるくらい、
二人でいることが多くなりました。
…そう。まだ、つきあってない。
あの花火大会の日にキスしたっきり。
あとは、俺にかかってる。
お兄さんとの約束。
『冬合宿で対戦するまでに
レギュラー定着と5本ブロック。』
今日は、何を隠そう、
その冬合宿最終日。
合宿だから、
チアなんかはもちろんつかなくて、
だから、アキちゃんは、純粋に
お兄さんとの約束の行方を気にして
毎日、応援に来てくれて。
なのに。
『…アキちゃん、ごめん。』
…俺、
レギュラー定着こそたどり着けたけど、
お兄さん、4本しか止められなかった。
悔しいけど、
アキちゃんの兄ちゃんは、強い。
今の俺じゃ、勝てなかった。
だけど、
だからといってアキちゃんを
諦める、とか
守れない、とかは
また別の話だと思うんです。
だから俺、解散した後、
アキちゃんと一緒に
お兄さん、追いかけました。
『…ぁんだよ?』
『あの、俺、4本しか止められなかったっす。』
『だっけ?』
『でも、それとこれとは別で、
まだこれから俺、強くなります。
アキちゃんのことも、ちゃんと大事にします。
だから、付き合ってもいいですか…
じゃなくて、付き合います!』
『…は?お前ら、まだ付き合ってねーの?』
??
『付き合ってねーのに、あの弁当、
毎日、完食してたの?』
えっ?
『いや、逆にスゲーわ。
俺、身内だけど…身内だから、か?
最初の頃のあの弁当、腹減ってても
食えなかったもんな。』
『ちょっと、お兄ちゃんっ(怒)』
『あれ、毎日、完食して
アキをやる気にさせてたって、
ブロックよりスゲーよ、マジで。』
『ちょっと、お兄ちゃん…』
『結局、そこそこのもん、
作れるようになったもんなぁ。
家族じゃ、あぁはさせられなかったよ。
むしろ、お前、スゲーと思う。』
『…お兄ちゃん?!』