第24章 ~恋ネコ④~ ゆったりプロポーズ
タオルで頭を拭きながら
お風呂からあがってきた伸行。
『あぁ、気持ちよかった~』
…あまりに普段通りの様子に、
なんか、こっちから話を切り出しにくい。
『なんか、飲む?』
『あ、水、ちょうだい。』
氷をたくさんいれた冷たい水を渡す。
少し、酔いをさましてほしくて。
『アキ、さっきの話だけどさ、』
『うん?』
『どう?』
『…あれ、プロポーズ?』
『そういうことになるのかな?』
『お風呂場で?全裸で?』
『そうだったね。』
『…』
『あれ?ごめん、裸はまずかったか。』
『…なんで、あのタイミング?』
『え?』
伸行は、とても、普通の顔で。
『風呂入りながら今日のこと思い返してて、
夜久も夏希も、すげーいい顔してたなぁ、
と思ってさ。
アキのあんな顔も、そろそろ見たいな、
と思ってたら、ちょうどアキ、
帰ってきただろ。だから。』
『…思い付き、みたいな?』
『そう聞こえた?それは悪かった。
でも、もともと考えてたよ。
昇進試験受けたときから、かな。』
…え?二年以上、前?
『早く受けて早く支店勤務終わらせて
早くアキと一緒になろうと思って。』
知らなかった。
黙々と、着々と、
自分のペースで準備してくれてたんだ。
『多分、次の春には、こっちに戻れる。
だから、今がタイミングかな、と。』
…で、思ったことが口に出たのが、
たまたま、お風呂場だったのね(笑)
頑張って
プロポーズの演出したりしないのが、
却って伸行らしい。
『あ、指輪、欲しい?』
このストレートな聞き方も。
『…婚約指輪は、いらないかな。
結婚指輪だけは、欲しいけど。』
『わかった。
じゃ、結婚式の日取り決めたら
指輪、一緒に買いに行こう。』
淡々と。
でも、確実に。
これが、
伸行のタイミングだったんだね。