第24章 ~恋ネコ④~ ゆったりプロポーズ
仕事から帰ると、
お風呂場に電気がついてる。
伸行の方が先に帰ったみたいだ。
半透明の風呂場のドアをノックして
声をかける。
『伸行、ただいまーっ。』
髪でも洗っているのだろうか、
バシャバシャ、シャワーの音がする。
『あ、おかえり。』
『ゆっくり入ってていいからね。』
声だけかけて、私はキッチンへ。
伸行はもう、お腹いっぱいだろうから
自分のツマミをなにか準備しようと
エプロンをつけていると、
お風呂場から、私を呼ぶ声。
『お~い、アキ~っ。』
あれ?シャンプー、きらしてた?
てか、あの髪、シャンプー、いる?
ドアの外から声をかける。
『なぁに?』
『ちょっと相談なんだけど。』
『…なに?開けるよ?』
ドアを半分だけ開けて中を覗くと、
気持ち良さそうに湯船に浸かる伸行。
『どうした?』
『そろそろさ、…ッコン……ないかな、って。』
…え?
今、なんて?
ケッコンって聞こえた気がしたけど?
まさか、今、ここで
ケッコンの話、しないよね?
“セッケン、ないかな?”の聞き間違い?
『ごめん、よく聞こえなかったんだけど…』
ジャブン、と顔を洗って
ゆったりとこっちを見て。
『いや、俺達もそろそろ、
ケッコン、考えないかな、って。
どう?まだ、早いかな?』
…ちょっと、待って。
それ、湯船で言う?
しかも、早いかなって?
突っ込みどころ満載で
何から言っていいかわからない。
『あ、やっぱ、まだ早いか?』
『は、は、早くない、むしろ遅い!』
『じゃあさ…』
ダメ!!
このままここで話を進めるのは
断固として避けたい。
だって、
今の、
プロポーズだよね?
そんな、
"せっけん、取って"みたいなノリで
プロポーズって、どうよ?!
『伸行、とりあえず、続きは
あがってからにしようか?』
『わかった。もちょっとしたらあがる。』
…天然なのは知ってましたけど。
これは、あんまりでないかい?!
とりあえず、落ち着こう。
キッチンで水を飲んだ。
…黒尾君に電話して聞きたいです。
君が言った"ゆったり"の"ゆ"は
"湯"の字じゃないですよね?
そんな、"湯ったり"なんて、
温泉の名前みたいなアドバイス、
おしゃれな君が
エスプレッソ飲みながら
するわけ、ないですよねっっ?!