第24章 ~恋ネコ④~ ゆったりプロポーズ
夜久君の結婚式の日、
伸行は、朝ご飯を食べながら、
夜久君との思い出をたくさん話してくれた。
高校に入りたての頃は
夜久君と黒尾君は仲が悪かったこと。
夜久君の彼女と伸行が同じクラスで
二人の間をとりもってあげたこと。
彼女にとって
夜久君は初恋の人だったこと。
実は当時は
ショートカットが好みだった夜久君も、
彼女に一目惚れしてたこと。
3年の大事な試合で夜久君が足を、
黒尾君が爪を怪我したけど、
後輩の驚異的な成長で勝てたこと。
大人になって再会した夜久君と彼女の
ケンカの仲裁を黒尾君としたこと。
何度も何度もケンカをして、
それでも離れない二人のことを
伸行も黒尾君もスゴいと思ってること。
夜久君とも彼女ともたくさん思い出がある分、
今日の二人の結婚式は特別な気がしていること。
…普段の伸行は、
あまり大きく感情を表さない。
話も、どちらかといったら
私がしゃべって、彼は相づちをうったり
感想を答えたりすることが多い。
でも、今日の伸行は、よくしゃべる。
夜久君の結婚式を
本当に楽しみにしてることは
よーく伝わってきて、
その姿を見ていたら
"私たちのことは、まだ先でもいいや"
と思った。
伸行にとって、結婚はまだ、
自分のことではなく
ひとのことなんだな、
…と思ったから。
『帰ってから、今日の話もきかせてね!』
と声をかけ、
私は先に、仕事に出掛けた。
明日の夜にはまた離れ離れになる。
今夜はどっちが先に帰るかわからないけど、
少しくらい遅くなっても
またお喋りしながら過ごそう。
彼が大事にしている仲間、
彼が大事にしている思い出、
私も、共有したいから。
ゆっくり、
ゆったり、
焦らないで、
時間と気持ちを重ねていく。
それが、私たちの、やり方だよね、
伸行。