第24章 ~恋ネコ④~ ゆったりプロポーズ
あれから半年。
夜久君の結婚式にあわせて
伸行が私の家に泊まりに来る日。
この半年はお互いに忙しくて、
連絡はとっていたけど
会うのは、あの日以来だ。
会わない日々には慣れてるけど、
会える日は、やっぱり嬉しくて。
今日も帰宅してすぐに
食事の準備をする。
黒尾君に言われたことを
心の中で思い出しながら。
伸行のペースで。
ゆったり。
カチャ、ガタン…玄関から音がする。
伸行だ。
手が離せないから、大きな声で。
『おかえり~っ!』
荷物を抱えた伸行の姿が現れる。
『アキ、ただいま。』
菜箸を持ったまま、
振り向いて、
抱きあって、
久々のキス。
あったかくて柔らかい。
『今、ちょうど手が離せないから…
ご飯、待っててね。』
『何が出来るの?』
『肉じゃが。先にお風呂、入ったら?』
『いや、久しぶりだから.まずアキを食べないと。
手が空くまで待つ。』
『そ?うふふ、私も、伸行を味見し…
…ぁあっ、ヤバイ、あぁん、もうっ!』
『どうした?』
『しょうゆ入れるつもりが、
ソース入れちゃったぁっ(涙)』
せっかく伸行のために、
いい牛肉買ったのにぃ…
伸行が、笑いながら近づいてくる。
『かわいい間違いするんだな。』
『君が私を先に食べるなんて言うから!』
『そりゃ、失礼。』
鍋を覗き込んだ伸行が、事も無げに言う。
『大丈夫。…んー、あるか?』
キッチンの買い置きの調味料棚を開けて、
何か探してる。
『あ、あった…あとは俺に任せて。』
シャツをまくった伸行の手には…
カレールー?
鍋にお湯を足しながら、サラリと言う。
『牛肉、ジャガイモ、玉ねぎ、ニンジン。
…白滝はご愛敬…カレーと一緒だろ?』
躊躇なくカレールーを鍋に投入。
まもなく、肉じゃがになるはずだった
鍋の中から、カレーの香りが漂ってきた。
恐るべし、マイペース!
つくづく、思う。
やっぱり私はこの人に夢中。
他の人には渡せない。
そして、火を止めた彼が、振り向く。
『出来た。あとはご飯待ち。
それまで…いいよね?』
もちろん。
私のことも、
あなたの自由に料理してね…
ゆったり。
久々に身体を交わらせた後、
二人の合作カレーを食べた。
うん、普通に、カレー。
…さすがに白滝は、
スプーンじゃ食べにくかったけど(笑)