第24章 ~恋ネコ④~ ゆったりプロポーズ
『海の"しっかり"と"マイペース"のギャップ、
面白いと思わねぇ?』
『うん、面白い。
それが、伸行にハマったきっかけだったもん。』
『でもさ、マイペースだけど、
自己チューじゃねーんだよな。』
…確かにそうだ。
人に迷惑をかけるマイペースじゃない。
『俺、海がいなかったら
あんな個性的なチームの主将、
とても務まんなかっただろうな。
俺の考えが乱れてるとき、
いっつも海が、一言でビシッと支えてくれて、
どんだけ救われたことか。』
…黒尾君を支えてたのかぁ。
『大丈夫。アイツ、常識あっから。
自分が居心地いいだけの付き合いなんて
絶対、考えてねぇよ。それは俺が保証する。
ただ…タイミングだけはなぁ。
それは俺にもわかんねー。
それこそ、海のペースがあんだろ。』
…だよね。
黒尾君が言ってくれたこと、全部、わかってる。
わかってるのに揺らいでた私こそ
伸行のことより自分のことを考えてた
自己チューだったかも。
『…でも、待つ方は、しんどいよな。』
そう、なんだよね。
そこ、なんだよね。
よく、わかるねぇ。
そして、ふと思う。
根拠はないんだけど、思わず、口走ってしまった。
『黒尾君ってもしかして、』
『ん?』
『愛され下手?』
『…突然の失礼な発言に、
俺は今、言葉を失ってマス…』
『あ、いや、ご、ごめん、
ええと、逆、逆。ヘタの反対…
愛し上手、ってことにしよう。』
『…にしよう、ってところが
驚きのテキトーさで、またビックリ(笑)』
『ご、めーん、ええと、違うの、』
黒尾君はエスプレッソを飲み干し、
チェイサーもぐっと飲み干して、
下を向いたまま、笑って言った。
『そうだな。俺、愛されんの、下手かも。
どっちかっつったら、愛してぇ方だなぁ。』
『…あの、相談にのってもらったのに
失礼なこと言ってごめん。黒尾君には
つい、何でも話せそうな気がして…』
『失礼じゃねーよ、さすが、海の彼女。
俺のこともピシッとお見通しだな。』
うまく、治めてくれたんだと思う。
『食った?じゃ、帰るか。』
駅まで一緒に歩く中で、
黒尾君が言った言葉。
『アキちゃん、ゆったり、な。』
相手に求めない。迫らない。
それが伸行のいいところ。
私がそれをしてしまったら、おしまい。
そうだね、ゆったり…だね。
黒尾君、ありがと。