第23章 ~恋ネコ③~ あと出しプロポーズ
失恋したての気持ちと
まさかの人からの告白。
『でも私…つまらない女だって…
もしゆーき君とつきあって
ゆーき君にまでそうやって思われたら…』
ゆーき君は、
失いたくない大事な友達。
失恋の勢いで
つきあうわけにはいかないし、
ましてや、中途半端な気持ちで
嫌われたくな…
『つまらなくなんか、ない!』
グッと押し付けられた唇。
私の知ってるどのゆーき君とも違う
ほとばしる思いが溢れた勢い。
それは、ほんの一瞬。
でも、
唇を離したゆーき君は、
私の肩を掴む手に力をこめたまま
言いました。
『…僕、謝らないよ。
ヒドイって思うならそれでもいい。
僕を恨むことで一瞬でも元カレのこと
忘れられるなら、それでいい。
僕、嫌われてもいいから、
一人で悲しむアキちゃんを放っておけないよ。』
絞り出すような声に
とてつもなく大きな優しさを感じて…
ねぇ、
ひとつだけ、
お願いさせてもらっていいかな?
甘えてごめんね。
でも、
ゆーき君にしか頼めない
お願いなの。
ズルいかもしれない。
ごめんね。
『ゆーき君、彼を、忘れさせてくれる?』
しばらく私を見つめて、
そして、声に出さずに
うん、と頷き、
右手で私の瞼を閉じさせて、
それから
両手を私の両肩にそっと添えて
今度は、優しく、優しく、
唇を重ねてくれました。
ゆーき君のサラサラの髪が
私の頬に触れて…
目をつぶっていても、
私の前にいるのは
ゆーき君なんだ、ってわかる。
泣いても
甘えても
いいんだな。
辛いって言っても
いいんだな。
それが、わかって。
私も
ゆーき君の背中に
両腕をまわしました。
小柄な体に、
溢れんばかりの優しさ。
ニコニコしてるけど
揺らぐことのない強い意思。
…最初から、
こんな人を好きになればよかった。
この言葉にできない思いも、
きっとゆーき君なら、わかってくれる。
…彼の片手をとり、
私の胸の上にそっと置いて
私はみずから、
床の上に横たわりました。